人が生きる為には「希望」が必要だ。

それは、体内からアドレナリンが吹き出すような直接的な物もあれば、遠くを見据えた先に、自らの進む道とリンクさせていき、道標となる様な物まで、様々な形がある。

今日の楽天の優勝は、まさに直接的な「希望」だったのだと思う。
それは、東北の人のみならず、日本中の巨人ファン以外が待ち望んだ映像だった筈だ。

 

 

パリーグ地域密着の成功

超弱小球団だったホークスが優勝する事なんて、「生きてる間にマグレで一度くらい・・・」程度の期待しかなかった。そのホークスの初優勝は博多の地に歓喜をもたらした。人気の劣るパリーグでの、更に地方での球団経営のモデルを形作ったのはホークスの成功が一役を買ってる事は間違いない。それが、千葉に移転して人気を盛り返したロッテや北海道の日ハムに引き継がれた。そして球団再編の混乱の中で生まれた楽天が、東北で圧倒的な支持を受けた「おらがチーム」に成長した姿を、今回の選手権で日本中が目撃する事となった。

 

水島新司も書かないシナリオ

そして、今日、最後の最後に田中将大が登場した。

野球漫画でもこんな筋書きは書かないかもしれない。昨日160球投げたピッチャーが、翌日登板する事なんて有り得ないのだ。「神様仏様稲尾様」の時代ならまだしも、科学的にフィジカルのメンテナンスをしっかりやる近代野球において、今回の田中の登板は、もう二度とないかもしれない特別過ぎる光景を日本中に見せてくれる事になった。

今シーズン無敗で縦横無尽な活躍をした田中も、昨日、今シーズン初めての敗戦で土が付いた。そして、大方の予想通り、来年はメジャーへ挑戦するはずだ。だから、昨日が田中の「日本での最後の雄姿」になる筈だった。(それに気づいていない野球ファンも多かったと思うが)

でも・・・なのに・・・、彼はこのシリーズで三度登場した。

「最後の最後を黒星で日本プロ野球を離れて、メジャーに挑戦」ではなく、「セオリーに反して、160球完投して今年唯一の負けを喫した翌日に、優勝を決める一戦の最後を締めた男」が来年メジャーに挑戦する事になった。彼は日本球界に伝説を遺して旅立つ事になった。逸材を失う事は寂しいが、悲しむ事なく、門出を拍手喝采で送りだそう。

 

希望は生きる糧になる

今年一年、というよりも、震災直後から3年間、悲しみに暮れた東北の地に「希望」を与え続け、そして喜びを与えた楽天は、田中将大という稀代のエースを擁して、選手権を制した。それは来シーズンへの新たな希望をつなぐものになる。

人には拠り所が必要だ。そして何より希望が必要だ。

今を嘆くよりも、遠くを見据えた先に見える希望の光が必要だ。

楽天おめでとう。東北の皆さん、おめでとう。

そして、多くの事に気付かせてくれて、ありがとう。