From 齋藤雄三
湯布院の温泉宿より
って、ダイレクト出版の小川さんみたいな書き出しで始めてみました(笑)
すみません。一度やってみたかったんです。
小川さんは、大体いつも「大阪のスタバより」って書いてますね。私は「博多のスタバより」って書こうと思っても何時も人が多いし、ヴェローチェの方が近くて居心地がいいので使うならそっちだし、でも、結局事務所に行った方が早いしコーヒーもあるから、事務所で仕事してしまうし、そもそも事務所に居ない事の方が多いので「博多のオフィスより」とも書けないし、で、結局小川さんの様な書き出しをやってみる機会がなかったのです。(長いw)
まあ、それは今日の本題とは関係ないですね。
そして、もっと言えば、昨日の晩に宿でこの原稿書いてたんですが、途中まで書いて寝てしまったので、結局子供達を預けていた博多の実家に戻って続きを書いてます(笑)すみません、看板に偽りありみたいで・・・どーしても一度言ってみたかったんで。
今日は、湯布院の街を妻と散策してみて、マーケティング的な観点で気付いた事をちょっと書いてみようと思います。普段行かない場所に来てみると、また違った刺激があるものです。
醤油さしのUSP
醤油さしを選ぶ基準って何ですか?
多分、特に明確な基準なく、取り敢えず必要に迫られて買ったものを使ってると思います。
それは百均で済ませたモノだったり、陶器市で気に入ったモノだったりすると思いますが、選んだ時に「なぜこれを選んだか?」なんて事は覚えてもいない事でしょう。ウチの醤油さしは、なぜこれを妻が選んだのかも知りませんし、いつからあるのかも知りません。そして、特にそれが不便だとか、毎年iPhoneが新型を発表する時に感じる胸のざわめきみたいなものは一切感じず、普通に使っているモノです。
だから、醤油さし製造業者(というニッチな業者があるのか知りませんが)は、特にUSPを考えることなく、今日まで至っているのが現状でしょう。
あ、ここでUSPという用語を解説しときます。ググったら出てきますが、「独自の売り・強み」なんて言葉で解説されているモノが多いと思います。元の言葉は「Unique Selling Proposition」です。私はこの言葉を解説する時には、「”何でそれ買ったの?”に対する答え」だと、ざっくりお伝えしています。
ということで、今回見かけた醤油さしは、「液だれしない」という明確なUSPを持っていました。ただ、これを見るまでは、「液だれしない」という事が重要だとも、日本中の消費者が抱えている問題だとも、正直思ってませんでした。「液だれしない」というのは、そこから「醤油さしを快適に使える」というベネフィット(≒利点)まで連想させます。
でも、湯布院まで来て醤油さしを買う必要もないし、特に毎日困ってないので、買いはしませんでしたが・・・ただ、次に醤油さしを買うという家族会議をする際には、「液だれしないモノがあるらしいぞ」という事を議題に挙げようと思います。
何か良く分からないけど、凄そう
全国各地、こういうのよくありますよね。大体、「全国コロッケコンクール」なんてものが、いつ開催されていて、どれだけ権威のある大会なのかも分かりません。でも、客足は絶えない。
まあ、モンドセレクションの権威が実は大したことない、ってのも一部の人には周知の事実ですが、こういうモノは言ったもん勝ちなんでしょう。雰囲気で買う。何か凄そうだから買う。観光地では、余り深く考えさせずに、「なんか凄そう」だけでモノは売れる傾向があります。(という事で、特に深く考えず食べました)
この天ぷら(練り物)だってそうです。たかが練り物(失礼。練り物を馬鹿にしている訳ではないです。練り物好きです。でも世間一般の評価ってそんな感じでしょ?)で1本400円。店の造りをそれっぽくしてるだけで、何か高級そうな感じになる。他の店の商品でもそうですが、所謂「惣菜」や「漬物」でも、商品パッケージのブランディングや店造りで、価値を高める事は出来るのだと感じました。(デパ地下なんかにあるものは、結構そういうの多いですね。中には本物もありますが、見かけだけ良くした実は言うほどのモノじゃないってのも結構ありますよね)
という事で、これも話の種にと1本食べました。まあ・・美味しかったです。
こねくり回したコピーよりも、ストレートに心の琴線に触れるもの
これは、個人的にズキュンときました。ごはん好きにはガッツリ響くコピーです。「うん、それ以上言わなくても分かるから」って、心の中で呟きました。炭水化物ダイエットに背を向ける、私の様な生粋のごはん好きには、これ程響くモノはないと思います。何なら、この看板だけでご飯食えそうな気がします。(←大袈裟)
でも、再三言ってますが、ここじゃなくても買えるんですよね。多分。三越とか大丸とかの地下に行けば、同じようなモノがあるんでしょう。でも、こういう所で商売が成り立つ。それは、財布のひもが緩んでる観光地ならではの光景なのでしょう。
あと、今日見かけたコピーでは「もう一個買っておけば良かった・・・と言われる商品です」なんてのも面白かったですね。家に帰って言うであろうセリフを使う事で、勝手に顧客の未来を共有しています。フューチャーペーシングという技術を何気に使ってます。ジャパネットの高田社長の得意技です。商品の説明をするんじゃなくて、顧客の未来をイメージさせる。高田社長は、家庭用ビデオカメラの販売から今の事業をスタートしたそうですが、この技術を使ってビデオカメラをバンバン売ったという事です。その技術は、今のテレビショッピングでも如何なく発揮されてますね。気になったら、一度見てみて下さい。「未来の」使ってるシーン・状況の説明を良くしてますよ。
不要不急のモノでも売れる
結局色々書きましたが、観光地で売れてるモノって、「必要か必要じゃないか、で言えば、特に必要でもないモノ」ですよね。それでも売れるモノは売れる。
ニーズがないのに、ニーズを喚起させる事。即ち、「顧客を教育する」とマーケティングの世界では言われる事を忠実に実行している店が、今回見かけた中では多かったように感じます。
先日の谷口さんのセミナーで出てきた話で「JINS PCメガネ」の話がありましたが、まさにJINSは「メガネを必要としていない層」に対して、PCを使う現代人のライフスタイルを鑑みて「目の保護の為に必要だ」というニーズを喚起しました。それに、まんまと乗っかった私の様な人が、日本中に少なからずいた事でJINSは大幅に売上を伸ばしました。
「顧客を教育する」というと、何か「テクニックを駆使して顧客に要らないモノまで買わせる」という売り手本意の考え方の様に聞こえるかもしれません。
が、あなたが扱っている商品やサービスが「本物」であると、あなた自身が心から信じているのであれば、その価値をしっかりと伝える事が「教育する」という事に繋がります。
「一度食べて貰えば分かるんだけどな~」、「使って貰えれば良さを分かってくれるんだけどな~」と言い訳しているのであれば、それはまだ「本当の良さ」を伝えきれていない証拠なのです。今一度、「どんなメッセージを顧客に伝えているか」、「今の顧客層以外にあなたの商品を必要としている人たちへ、メッセージを伝えきれているか」ということを考えてみて下さい。