ライバルは居た方がいい


 

 真面目で正直な人は生き辛い?

 

先日、クライアントの採用面接に同席した時の事です。

 

直前に履歴書を見るとAさんは54歳。前職は、誰もが知ってる食品メーカーで、そこで25年勤めた方でした。若手の営業マンを採用したいところだったので、正直言って、「厳しいかなぁ」というのが事前の印象。言い方悪いですが、期待せずに面接に臨みました。

 

 

でも、会ってみると、近年まれに見る「心がキレイな人」で、まあ何というか、素直で真っ直ぐな人生歩んで来られたんだなと、そして正直者だからこそ「損」する事も多かったんだろうなと感じました。

 

いつもは「何か隠してるか?」とか、「良い風に過去の実績言ってるけど、ホントは違うんじゃ?」という様な、穿った見方をしてしまうのですが、今回は全く逆でした。「どうすればこの人がこの会社で活躍できるか?」という事を、面接中ずっとイメージしながら考えていました。

 

 

 

業界再編とよくある話

 

職業柄、業界の内部事情とか凄く気になるので、何で前職のメーカーを退職する事になったのかという事を聞いていく中で、その業界の、一般には知られていない話を聴くことが出来ました。

 

余り実名を出してしまうと問題があるので、仮に業界最大手の会社をC社とします。C社は現在、外国資本と提携して、拡大路線を加速させています。Aさんは業界二番手のB社に勤めていましたが、B社は別カテゴリーの大手食品メーカーD社と資本提携をして、社内の体制がガラリと変わったそうです。営業本部長もD社からの出向で、C社を追随するために、売上を2倍近くに伸ばす計画を立てます。

 

それまではモノ作りに拘って来たB社ですが、とにかく売上を上げる事が至上命題のD社の意向には従わざるを得ず、社内の空気はガラッと変わってしまったそうです。そして、2倍の売上目標は当然未達に終わり、であれば社内の合理化を進めるしかないという事で、早期退職を募った流れで、Aさんは辞める事にしたそうです。

 

この手の話はよくあります。ぬるま湯に浸かっていた組織が、外部との提携で熱湯を浴びて、社員が付いていけなくなり辞めていく。

 

 

モノ作りに大切な事

 

でも、今回の話はちょっと違うのかなと感じました。厳しく締め付けることは誰にでもできます。ただ、メーカーである以上、売上目標を追う事も当然必要ですが、モノ作りの魂を失ってしまうと、短期的な業績改善は可能でも、長期的には立ちいかなくなります。

 

日産にゴーンさんがやってきて、大規模なコストカットを断行しました。しかし、彼は同時に技術者にプライドを持たせる事も熱心に行いました。その結果復活したのがフェアレディZです。

 

自分たちが心から惚れる様な商品でないと、社員は100%以上の力を発揮してそれを顧客に伝えることはない筈です。それが先ず、メーカーにとって一番大切な事ではないかと思うのです。

 

Aさんの話を聴いていく中で、こんなことを考えていたので、最後に聴きました。「Aさん、B社の商品って好きですか?」と。そうすると、Aさんはこう答えました。

 

「もちろんです!」

「何より社長が、誰よりも思いを込めて開発してきた商品ばかりですから」

 

B社の事は以前から、「面白い商品を作る会社だな」というイメージはあったのですが、やっぱりそういう真っ当なモノ作りをされる会社だったんだな、と確信しました。

 

 

ライバルを潰せ

 

話を業界内部の事に戻します。

 

C社はダントツの業界一位です。そして外国資本と提携して、現在やっているのは「2位以下を潰せ」という大号令の元、とにかく2位3位を潰す為なら無理してどんな値下げでもして、シェアを奪おうとしています。

 

なので、今はC社の商品はどこも安く売ってると思います。しかし、本当に2位以下を駆逐し、モノポリーが完成した先に目指しているのは、完全に市場をコントロールする力です。それは同時に消費者の選択権が少なくなる事を意味します。

 

異論反論を承知で言いますが、こういうことは正気の沙汰とは思えません。どの業界にも似たような事はあるかと思いますが、ライバルを潰して何になるというのでしょうか?ライバル会社の社員、家族、取引先、関係者からの負のエネルギーを、恨みを、悲しみを一斉に浴びる事を、何とも思ってないのでしょうか?

 

 

多分怖くないんでしょうね、人の恨みのエネルギーを。

 

 

そして、「ライバルを潰すことに熱心な会社」と世間に知れた時の負のイメージを、何とも思わないのでしょう。

 

 

 

ライバルはいた方がいい

 

ライバルの存在があるからこそ、「負けられない」という力が湧きます。ライバルの存在があるからこそ、より自社の商品開発に熱が入ります。

 

スポーツの世界でも同じです。野球界では王・長嶋や桑田・清原。相撲界では柏鵬時代と呼ばれた柏戸と大鵬、近年では貴乃花と曙の関係。ライバルがいたからこそ、お互いに高め合う事が出来ていました。最近の白鵬を見ていると、ライバル不在の大変さを感じてしまいます。

 

日本には素晴らしい言葉があります。

 

「切磋琢磨」

 

相手がいるからこそ、自らを高める動機がある。孤高を貫く事は、傍目には格好よく見えても、案外シンドイものです。

 

ライバルがいる事で、より緊張感が生まれ、高みを目指す事が出来る。そんな時、ライバルは「潰す」対象ではなく、「感謝」すべき対象であると思うのです。

 

 

是非、目の上のタンコブの様な存在や、苦々しく思っている存在に対して、まずは感謝する事から始めてみて下さい。

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